プログレスの月➄~エリザベス女王と土星の話~

エリザベス2世は、2022年9月8日、スコットランドのバルモラル城で崩御されました。満96歳、在位期間は70年7ヶ月。

今回は、女王のご結婚から即位にかけてのプログレス月の動きと、逝去されたときの時期表示などを取り上げてみました。結構長文ですが(^^;)よろしければお読みください!

エリザベス女王のホロスコープ

1926年4月21日午前2時40分、ロンドン生まれ。(astro.comより)

まず、エリザベス女王のホロスコープをざっくりと見てみます。

ノーアスペクトの太陽・月・水星

太陽は牡牛座で月は獅子座。

「あるべき理想の状態を建設し維持することで、尊敬され愛され賞賛されたい欲求を満たしていく。」

太陽、月、土星を含めて6天体が不動宮にあって忍耐力や継続力が強調されています。

太陽は3ハウス、獅子座の月は7ハウスにあり、コミュニケーションの必要性と重要性。

太陽、月、水星はノーアスペクトで、自らのアイデアにより決断して行動する「ソリスト」であるとも言えます。

女王は世界中の人々と出会い、握手を交わし、またSNSを活用して様々な発信もされていました。国民の女王として、国民の母として、世界に対してドラマチックに表現されましたね。

まさに、という感じですね~。

余談ですが、牡牛座0度の太陽は、チャールズ3世の月にピッタリ合です。女王の使命を理解しサポートし引き継いだことがうかがえます。

MCの土星とアングルのTスクエア

一番目立つのは、MCの土星ですね~

土星は父親であるジョージ6世を表すと同時に、女王としての自分自身でもあります。

エリザベス女王の人生を一言で表すと「義務」であった、と何かの記事で読みましたが、まさに土星の一面を表す言葉ですね。

MCは社会における姿であり、人々はそこに「土星のお手本を見た」あるいは「土星を託した」のかもしれません。女王は人々の期待に生涯をかけて応えました。

土星へのハードアスペクト

ホロスコープを絵的に眺めると、北・東半球に集まっている天体群を、MCの土星(逆行)が引っ張っているように見えますね。身体が丈夫ではなかった父王の名代として、全力で頑張っているイメージです。

そして、MCの土星が、自分自身を示す1ハウスの「水瓶座の火星・木星」にスクエア。

権威ある女王として常に自分自身を制限・コントロールする必要がありました。

水瓶座アセンダントはインターセプトされ、独立精神、自由・平等・未来志向性など、水瓶座的な要素は少なからず抑圧されていたのかもしれません。

そして、そのスクエアに対して、7ハウスの「獅子座海王星」が加わってTスクエアを形成。

海王星は、土星が形作ったものを溶かし、迷いを生じさせて、権威やエゴの弱体化への恐れを生んだかもしれません。

実際には、女王は様々な困難(現実)を乗り越え、開かれた王室を目指しながらも威厳を保ち、国民の理想の女王となりました。

土星vs海王星は、浄化と洗練のレッスンとも言われています。

女王は、アングルのTスクエアを使いこなし、土星の新陳代謝を常に行い、磨き上げたですね。

奉仕とカリスマ性

MCの土星は12ハウスのルーラーでもあり、私的な時間の多くを公務に捧げたことを示唆し、6ハウス(社会奉仕)の冥王星と共鳴しています。

また、土星と海王星の組合せは「義務と犠牲」を表し、魚座の金星が共鳴していそう。

大きな組織のリーダーであり、犠牲的な愛情をもって体力気力の限界を超えて働くカリスマ社長という感じ?

さらに、海王星にはリリスが合、アセンダント軸にはノード軸が重なり、女王は浮世離れした魅力の縁の結び目のような存在だったのでしょう。

ノエルティルは7ハウスの海王星について、極めて重要な「必要とされる必要性」と述べています。おそらく女王自身も国民を必要としていたのでしょう。

ミッド・ポイント

次のミッド・ポイントに注目してみました。

  • 月=金星/冥王星
  • 月=太陽/土星

女王の人間的魅力や愛情の深さと、人生における困難・重責。魚座の金星は、犠牲的奉仕の精神とともに美的センスの可能性を示唆しています。

月は7ハウスのルーラーで7ハウスにあり、傍らにはいつもフィリップ殿下の姿が見られましたね。

そして、

  • 火星=天王星/冥王星

火星は水瓶座にあり、体制への強い反抗・行動力。エッジの効いた破壊力のあるミッド・ポイントですね~。

もしかしたら、個人で表現しきれなかった水瓶座の要素は、王室ファミリーによる規範外の言動として現れたのかも??

・・・

エリザベス女王は、国や国民に忠誠を誓いその義務を全うして、国民だけでなく世界中の人々にとっての女王となりました。しかし、その内面には「義務」と「自由」との葛藤もあったのでしょう。だからこそ、人々の信頼を得て王室を長きに渡り維持することができたのかなと思います

さて、ここからはプログレスの月を中心に見てみましょう~。

プログレスの月の動きなど

ご成婚の前後~戴冠式、そして先日逝去された頃の時期表示を中心にとりあげてみました。

初めての舞踏会

9歳のときに祖父ジョージ5世が崩御。10歳のときに、伯父のエドワード8世が「王冠をかけた恋」により突然退位し父ジョージ6世が即位したことで、王位継承第一位の立場となります。

その後、12才のときに初めて舞踏会に出席、それを機に公務に出席するようになりました。その頃プログレスの月はアセンダントを通過、まさに新しい始まり、新たな自己像を示しています。(下の二重円)

また、ソーラーアークでは、太陽=月、月=土星などがあり、月と太陽は7ハウス(パートナーシップ)の共同ルーラーでもあり、重要な出会いの時期であったと言えるでしょう。

また、月は6ハウス(奉仕)も支配し、公務へのデビューも示しています。

夫となるフィリップ殿下とは幼少期から何度か会う機会はあったけれど、この数年間で距離が縮まったようです。

婚約発表から結婚へ

1945年、19歳のときに第二次世界大戦の終戦を迎えます。

そして、1946年4月、20才の誕生日に、当時の大英帝国全土に向けたラジオ演説の中で、次のような誓いを述べます。

私は、私の全生涯を、たとえそれが長かろうと短かろうと、あなた方と我々の全てが属するところの偉大な、威厳ある国家に捧げる決意であることを、あなた方の前に宣言いたします。

Wikipedia

弱冠二十歳で、なかなかできることではないですね~。しかもその約束を果たしました。。

下の二重円(外円)は、この演説をおこなった20歳の誕生日のプログレスチャートです。まさにプログレス新月の時期を迎えていますね。

同時に、ソーラーアークAC=月ソーラーアーク太陽=火星、そして、チャートには記入していませんが、トランジット冥王星・土星コンジャンクトなども形成されていて、人生の”大きな鐘”がいくつも鳴っているのがわかります。

その後、同年7月の婚約発表の時には、プログレスの月はICを通過し、出生の土星とオポジションを形成。

新しく家庭を築くこと、未来の女王としての決意表明をすることなど、公私共に第一歩を踏み出しました。

プログレス新月は(ほぼ)ICで起こっていますが、これは、人生での大きな節目を示しており、女王の長い人生の中でも大変重要な時期であったことがうかがえます。

父ジョージ6世の死、女王として即位

結婚から約4年後の1952年2月6日、25歳のときに、父ジョージ6世の死に伴いエリザベス2世として即位します。(下の二重円)

プログレス月は、まさにディセンダントを通過。公・社会へのデビューと言えますね。

プログレス太陽がICに到達、ソーラーアーク太陽=MCを形成。国王であった父の死により、自らが女王として即位するのに相応しい時期表示ですね~。

火星・木星と海王星のオポジションに、トランジット冥王星がぴったりのっています。大きなプレッシャーと共に自己像の変容を促します。

そして、アセンダントに対して、トランジット海王星がスクエア。その姿は国民だけでなく世界にインパクトを与え、特別な存在として受け入れられたのでしょう。

その後、同年6月の戴冠式には、プログレス月は7ハウス獅子座の月に重なり、まさに国民の女王が誕生しました。

その後、プログレス月は7ハウスをすすみ、女王は夫のフィリップ殿下と共に半年間かけて世界を回りました。

ここでも大きな鐘がいくつも鳴っていますね~。

ソーラーアークのオール・スクエア

40代半ば頃の、ソーラーアーク天体による、出生の天体に対するセミスクエア(45度)の形成は、「中年の危機」の緊張を示す重要な時期表示の一つと言えます。(オール・セミスクエア)

同様に、90歳を過ぎた頃には、ソーラーアーク天体は、出生の天体に対してスクエアを形成しますが、エリザベス女王は、2020年2月にこの時期を迎えています。

さらに、2020年10月にはプログレスの月がアセンダントを通過。

一般的には、この年齢では人生のダイナミックな動きは少なくなり、あまり大きな変化は見られないようですが、女王の場合、2020年1月にヘンリー王子が王室離脱表明をしたことは、大変大きな衝撃だったでしょう。

女王として祖母として、心の痛みを伴う重要な判断と決断のときであったと言えます。

崩御のとき

女王は、2022年9月8日午後3時10分、スコットランドのバルモラル城で亡くなりました。満96歳。

ちょうどその頃、バッキンガム宮殿の上空には二重の虹がかかったそうですね。女王が人々に感謝と最後のメッセージを伝えたかのようでした。

女王の7ハウスには、獅子座の海王星がありますが、まるで映写機のようだな~と思います。国民への思いを、プロジェクションマッピングのように虹として空に映し出したような。。

崩御時のソーラーアークとトランジット

次の二重円は、内円が出生図、外円が女王が亡くなった日時で作成したソーラーアーク・チャートです。これを見ていると、「義務からの解放」「区切り」が感じられます。

崩御時のソーラーアークでは、出生図の土星の上に、SA木星ーSA海王星がぴったりとのっています

まるでダイヤルの「カチッ」と合う音が聞こえてくるようです。。

木星ー海王星の組合せには、解放、緩める、拡大する、許す、赦す、などの意味がありますが、まさに70年の長きにわたり真摯に務めてきた「義務(土星)」からの解放と言えるのかもしれません。

(父王ジョージ6世も、きっとあちらの世界で褒めてくれるのでしょう。。)

そして、プログレス月、トランジット月、トランジット土星が、出生図の火星(木星・海王星)にのっています

こちらは、自由で開かれた「水瓶座的な」キャラクターに焦点が当たっています。

MCの土星(義務)とアセンダントの水瓶座火星・木星(個性や自由)、このスクエアを両立させてきた人生でしたが、その任務が完了して自由になったのだという気がしてなりません。

ソーラーアークの天王星がぴったり牡羊ポイントにあるのも、共鳴していますね。

上のチャートには記入していませんが、出生の土星に対して、逝去時のトランジット海王星がピッタリトラインを形成しています。土星と海王星のアスペクトがいくつも見られるのが興味深いですね。

崩御の直前の月食

女王が亡くなる直前の月食は、出生図のMC軸上で起こっていますので、参考までに見てみます。

アングル上で起こる食は、個人にとって最もダイナミックな変化の時期となります

MCは社会的立場、ICは家族や家庭など私的な立場であり、どちらにも大きな変化の可能性を示していると言えます。

月食(満月)には「リリース」の意味があり、ここでも「解放」が示唆されています。

ここまで時期表示を見てきましたが、特にプログレスの月がピッタリとはまっていて興味深いですね~!

エリザベス女王の土星について、雑感

最後に、エリザベス女王の土星、土星一般についてもう少し書いてみます。

牡牛座の太陽と蠍座の土星

『土星占星術講座』(松村潔著)に、なるほど~と納得する解説があったので一部要約してご紹介します。

まず、太陽は努力を向ける方向を表し、土星は努力の最終達成ポイントを表しています。

エリザベス女王の場合、太陽は牡牛座で、生まれつきの才能や資産を開花させることで人生を発展させます。

そして、土星は蠍座にあり、人格の境界線の外にある他者や集団、あるいは未知の考えや感情に結びついてより深い潜在力に到達します。

この組合せは、

「優れた資質や伝統や地位などを受け継ぐような生き方をするでしょう。年を取るにつれ個人性を超えた深い領域を追求します。」

「牡牛座・蠍座ともに固定サインで、手に入れたものをずっと長く維持して幸福感を保つことができます。」

とあります。すご~く納得ですね。

個人的感想ですが、年を取るにつれて、自分の土星サインの特徴に「寄って行く」ような気がします。

土星とはあなたの無知である?!

最後に占星家のロバート・ハンド氏の言葉を紹介します。

以前、ロバート・ハンド氏の「あなたの土星はあなたの規律(discipline)ではなく、あなたの無知(ignorance)です」という一文を読んで、軽く衝撃を受けたことがあります。

仏教において、無知(無智・無明)はすべての煩悩の根元であると言われていますが、そうすると、「土星」とは人間の煩悩の生滅に深く関わっているのかもしれません?!

私たちは土星の内側で同じ過ちを繰り返しているのでしょうか・・・?

土星の無知を超えるためには、自分の枠の外側を知る、知ろうとする、あるいは、現実と思っているものが現実でないことを知る、自分の無知を知る・・・そのような姿勢が必要なのかもしれないですね~

エリザベス女王の人生からは、「心洗われる土星」について学ぶことができたように思います。今の世の中を見ると、様々な土星の表現があることがよくわかりますね。

長文お読みいただきありがとうございました!

・・・・・

後記:
友人の娘さん(20代)が、約1年後に、ぴったりIC上でプログレスの新月を迎えます。さらに、その新月は太陽と月のミッドポイントで起こり(つまりIC=太陽/月)、そのミッドポイントは牡羊ポイントにかかっています。

上でとりあげたエリザベス女王の時期表示と似ていますよね。仕事かプライベートかわかりませんが、今後がとても楽しみです~。若いっていいですね~(笑)

参考記事:
プログレスの月とノード軸~人生のサイクル~
プログレスの月②~山口百恵さんの引退~
プログレスの月③~バイデン氏の場合~
プログレスの月④~バルサミックムーン〜ヘンリー王子の場合

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