土星を外に見ないということ

以前のブログ【蟹座と天秤座のスクエア】の最後に、自由を実感するためには制限が必要で、要はそれらのバランスが大切だと書いたのですが、書きながら何かすっきりしない感じがしていました。

そこで、制限、ルール、権威などを表す「土星」について、もう少し考えてみました(自分への戒めもこめて)のでよろしければお読みください。

権威にしたがう本能

たとえば自分が所属している国や組織のリーダーを、疑わおうとせず支持し続けるというのは、どのような心理状態なのでしょうか。

人間には、強者に対して盲目的に追従したい原初的本能があるそうです。(これは、わかる気がします。)

つまり、強者のもとで安全を守りたいということですが、人間を含めた動物が生き抜くために最も必要なことなのだと思います。

この権威者の指示に従ってしまう心理は、「ミルグラムの実験」でも明らかになっているようです。

*ミルグラムの実験・・・権威者の指示であれば、ほとんどの人が電気ショックのボタンを押し続けてしまうという実験。

(正直なところ、ボタンを押さない自信は私もありません。。)

占星術で考えると、月(安全)と土星(権威)の関係であり、ホロスコープの重要な基盤である「ICーMC軸」とも言えます。

最近、ロシア国民への街頭インタビューで意外だったのが、「プーチンは国を愛している愛国者であることが嬉しいのだ」という声でした。

つまり、プーチン支持があるとしたら、その根底には国民の強烈な「愛国心」があり、それを守り得る「強い指導者」を支持していると言えるのかもしれません。

まずは愛国心があり、強い指導者であれば誰でもよいのかもと感じました(実際はどうかわかりませんが)。

強い人の傘下に入り指示に従う傾向は、程度の差はあれ人間の本能として生まれつき備わっているのでしょう。

そして、それは、自分を守ってくれる権威者が他で何をしていようと、自分が安全であればとりあえずよしとする、という受け身的な傾向になりがちなのかもしれません。

「権威主義」における正義

人が権威を持ったとき、もしもその人物が理想の国の姿を強く描いているとしたら、その理想にもとづいて、隅々までコントロールしようとする可能性があるのでしょう。

全ての政策は、国をよくするための圧倒的な正義において行われます。そこに神話のような「物語」を重ねているのかもしれません。

そして、理想実現の妨げになる「異分子」が目立ち始めるとそれが許せなくなり、正義を振りかざしてそれらを排除するべく力を加えていきます。

愛着が強いほどコントロールが増大していくのでしょう。

これは「しつけ」と称した「虐待」とどこか似ているように思います。

思い通りのよい子になるためのしつけに従わないこどもが悪いのです。。

権威主義を巨大な家族として考えてみると・・・

たとえば権威者は父親と言えます。こどもは両親の元で社会や家庭内で必要なルールを教えられて育ちます。これは、集団の秩序(平和)を保つためにとても重要なことです。

そして、多かれ少なかれ親に反抗する時期を経て、家をでて独り立ちしていきます。たとえ大喧嘩をしたとしても、「自立」というのが子育ての成功なのだと思います。

ですから、大家族である権威主義の場合も、内部からの独立というのはどうしても付きまとうものなのではと思います。

子育てで言うと”親離れ子離れ”であり、ホロスコープで言うと”AC軸とMC軸のスクエア”と言えます。

土星と苦手意識

占星術について学んでいると、よく「天体を外に投影しないで、全部自分でやることが重要」というフレーズを耳にします。

土星は「責任」「制限」「苦手」そして「恐れ」などを示すと言われています。

なので、土星的な存在を外部に見て、その存在に責任をとってもらうのはとても楽ちんなのだと思います。苦手な部分は人にやってもらうということですね。

意識していないと、つい、「ルールに従えばよい」「言われたとおりにした」「私には責任がない」「偉い人が考えたことだから正しいのだろう」など、自分で考えることをやめてしまうかもしれません。

あるいは、その存在に恐れをいだき、言いなりになってしまうこともあるでしょう。つまり、外に「恐怖」を見るのです。

ただし、その存在の実態は、実は恐れるに足らないのだと思います。なぜなら、その存在も何かを恐れているからです。

(敢えて言うならば、程度や状況の違いはあるけれど、これらは「奴隷」状態なのだと思います。。)

このような外部の人物や組織に対する土星の投影は、

裏を返すと、このような態度が権威者の暴走を招くのだと言えます。ワンマン社長の周りにはイエスマンばかりという例はよくあると思います。

土星の恐れと攻撃

最近、ある本を読みました。

『現代史を支配する病人たち』(P.アコス、P.レンシュニック著)という本ですが、有名な政治家たちの病が世界の状況をいかに左右してきたかが書かれていて(真偽のほどはわかりませんが)、驚きと恐ろしさを感じました。。

攻撃とは、恐れや弱さを覆い隠すために強さを誇示すること、と考えられますが、

権力を手にした人は、自分の中の巨大な恐れ--外からの攻撃を受けるのではないか、土地や支持、権力、健康を失って全てが崩壊するのではないか--にずっと向き合い続けるのだと思います。

それは大きなストレスを伴い、精神のバランスを崩すことがとても多いのでしょう。

本人はそれを隠そうとし、疑心暗鬼や妄想にとらわれて冷静な判断ができない状態で指示を出すことになります。

本を読むと、周りが見て見ぬふりをしている間に、事態が深刻化していったことがわかります。

土星を外に見ない

権威者の暴走を防ぐために、今すぐ、自分でできることは、土星を外に見ないということだと思います。

そのためには、かなり意識的な努力が必要なのでしょう。

自分で考えて自分で決める
結果を人の責任にしない
上司の指示であっても盲目的に従うことはしない
自分のモラルに反すると感じたらノーと言える
場合によってはそこを去る
そして社会のちっぽけな歯車だと思わないで、選挙にいく・・・

土星を人に預けず自分でやるためには、自分を信頼し尊重する必要があります。

たとえ欠点だらけであっても、自分はかけがえのない存在なのだと思えるように、一つずつ失敗や成功の体験を積み重ねていくこと。

何歳であっても関係なく、一歩一歩進んでいきたいものです。

山羊座と水瓶座について

最後に山羊座から水瓶座への流れについて書いてみます。

山羊座(土星)は権威を表しますが、同時に、ルールや秩序=真面目にルールを守ろうとする従順な人も示しているのでしょう。

土星の働きは、人体で言うと骨であり、考えを形にしてものごとを実現していく重要なものですが、それが示すルールは、人を鈍感にして眠らせてしまう恐れがあります。

そこで、水瓶座の出番です!

水瓶座(天王星)は私たちを眠りから起こしてくれるのでしょう。

奴隷状態からの解放と言ってもいいかもしれません。

「目を覚まして自分で考えろ~!」という感じでしょうか。

(松村潔先生が「天王星は土星を壊すためだけにある」と仰っていたのが、すごく納得できます。。)

また、水瓶座は俯瞰的な視点を表しています。上から全体を眺めると色々な立場でものごとを考えることができるのだと思います。(願わくば人間だけでなく、自然界全てを含めて)

来年から冥王星が水瓶座に移動していきますが、眠っている私たちをたたき起こして、新しい視点を持って行動するよう促してくれるのだと期待しています。

・・・

追記①

参考に、以前占星家の友人が勉強会で紹介してくれた人物の言葉を思い出したので引用させていただきます。

”私の罪は従順だったことだ”

アドルフ・アイヒマン・・・ホロコーストに関与し、数百万人におよぶ強制収容所への移送に指揮的役割を担った

wikipediaより

その時代、その立場であれば、誰にでもこのような状態になる可能性はあったのだろうと思います。

私たちは、人間の危うさや未熟さをしっかりと意識し、いつも自分に問いかける必要があるのでしょう。

追記②

文豪 夏目漱石は、明治日本の上滑りの近代化がもたらした「全体主義」の中で悩みぬいた結果、「自己本位」の思想について、「ようやく自分の鶴橋(つるはし)をがちりと鉱脈に掘り当てた気がした」と言う。

「自己本位」とは、大勢に同調したり、政治的指導者に判断を委ねたりする「大衆」ではなく、自ら考え進むべき道を選択する自由と、それに伴う困難と義務を負わんとする「個人として立つ」ということ。

しかしながら、自己本位(個人主義)は、全体主義がもつ「束」の中の安心はなく、ときには、たった独りぼっちになって、人に知られない淋しさも潜んでいる、と漱石は言う。

(以上、中野剛志氏による記事、適菜収著『ニッポンを蝕む全体主義』を読み解く、より抜粋要約)

夏目漱石は、権威嫌いで有名だったそうですね。あの時代において、世の流れに反して自分自身の在り方を探り、貫いたのはすごいですね。。(水瓶座太陽の生まれで納得。)

なるほど、「自由」とは「責任」と「義務」を伴ってこその自由なのだな、、と思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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