個人の人生の領域を考えるとき、ホロスコープの構造はとてもよくできていると思うのですが、『派生ハウス』という考え方で親子関係をみてみると、さらに興味深いことがわかります。
派生ハウスとは?
『派生ハウス』とは、個人のホロスコープにおいて、例えばその人のパートナーについて考えるときには、パートナーを表す7ハウスを「パートナーの1ハウス」とする技法です。パートナー像を考察したり、パートナーへのトランジットの影響を予測したりするのにも応用できます。
例)
・本人の7ハウス ⇒ 相手の1ハウス(相手の自己像)
・本人の8ハウス ⇒ 相手の2ハウス(相手の収入)
・本人の10ハウス ⇒ 相手の4ハウス(相手の家庭・基盤)
また、このような考え方もできます。
・11ハウスは10ハウス(仕事)からみた2ハウス(収入)
⇒ 仕事から得られる収入
そのハウスにある天体やそのハウスのルーラーが表示天体となります。
そこで、こどもとの関係を派生ハウスで考える前に、まずは『基本のホロスコープ』の12ハウスを火・地・風・水のエレメントでグループに分けてみます。
12ハウスと4つのエレメント(火・地・風・水)
火のエレメント
1ハウス(牡羊座)
5ハウス(獅子座)
9ハウス(射手座)
地のエレメント
2ハウス(牡牛座)
6ハウス(乙女座)
10ハウス(山羊座)
風のエレメント
3ハウス(双子座)
7ハウス(天秤座)
11ハウス(水瓶座)
水のエレメント
4ハウス(蟹座)
8ハウス(蠍座)
12ハウス(魚座)
各エレメントごとに、こども(5ハウス)との関係を派生ハウスでみてみます。
火: 1・5・9ハウス
・自分の5ハウス(こども・生み出す喜び・創造性・愛情表現)はこども(5ハウス)の1ハウス。
こども、または、こども的な存在は最高のクリエイションであり喜びの源泉である
こどもは愛情表現の結果生み出される
・自分の1ハウス(自己像)は、こどもの9ハウス(大学などの高等教育・世界観)。
○○大学を出た子どもの親である、という自己像
親の姿がこどもの指針となる
・自分の9ハウス(学び続ける姿勢)は、こどもの5ハウス(創造性)。
何事にも興味を持つ親の姿勢がこどものクリエイティブな面を育てる
そのこどもならではの自己表現を通して親の世界観が広がる
地: 2・6・10ハウス
・自分の2ハウス(自己価値)は、こどもの10ハウス(社会の中での自己表現)。
○○として社会の中で活躍している子どもの親、という自己価値
親の期待に沿うために良い仕事に就こうとがんばるこども
・自分の6ハウス(勤労)は、こどもの2ハウス(自己価値・収入)。
お父さんの働く姿や働き方がこどもの自己価値となる 自慢のお父さん
こどもの収入のためにお父さんは働く
・自分の10ハウス(仕事・社会での顔)は、こどもの6ハウス(勤労)。
社会の中で役割を果たすお父さんの背中を見てこどもは「働く」ことを学ぶ
こどもの勤め先が親のステイタスとなる
風: 3・7・11ハウス
・自分の3ハウス(ご近所付き合い)は、こどもの11ハウス(友だち)。
親の日常的な近隣との関係性の中で、こどもは仲間との付き合いを学ぶ
こどもの友だちを通して親のご近所づきあいが広がる
・自分の7ハウス(夫婦関係)は、こどもの3ハウス(コミュニケーション)。
両親の人間関係からコミュニケーションの雛形を学ぶ
こどもの様々なコミュニケーション能力が夫婦関係に影響をおよぼす
・自分の11ハウス(仲間)は、こどもの7ハウス(パートナーシップ)。
仲間と助け合いながら目標を達成していく親の姿を見て、人と協力し合うことを学ぶ
こどもの結婚は親の希望(11ハウス)である
ちょっとこじつけな感じもありますが、納得できる部分も多いのではと思います。
さて、ここからが本題です。
水エレメントの4・8・12ハウスについて考えてみます
上記とは様子ががらりと変わります。
・自分の4ハウス(家庭・心の基盤)は、こども(5ハウス)の12ハウス(隠された感情)。
親が作る家族の雰囲気、再現する幼い頃の心象風景がこどもの無意識に刻まれる
家庭での出来事がこどもが感情を隠すきっかけとなる
・自分の8ハウス(親密な関係)は、こどもの4ハウス(家庭・心の基盤)。
親がどんな時も見捨てずに見守ってくれた体験は、こどもの絶対的な安心感を形成する
両親の深い信頼関係がこどもの心の基盤を作る
・自分の12ハウス(隠された感情)は、こどもの8ハウス(親密な関係)。
親の無意識や蓋をした感情が、こどもが親密な相手に対して持つ警戒心に影響を及ぼす
親の言動の中に見かけとは違う何かを感じたとき、こどもは人の心情に深く関わることを学ぶ。
こどもと深く関わる中で、親は自分の押し殺してきた感情に気が付く
(ごく一部の例をあげてみました。他にも様々なパターンがあるでしょう。)
これらはすべて水エレメントのハウスです。つまり、親は子どもとの関係において水(感情)の領域の体験を共有していることになります。深い感情(喜怒哀楽)のやり取りの中で、親は子どもと共に心の中のやわらかい部分を育てていく、それをホロスコープは見事に表していますね。
子どもと共有するハウスをエレメントごとにまとめてみると
火のエレメント:
牡羊座(1ハウス=自己像・始める力) ⇒こどもの9ハウス
獅子座(5ハウス=創造性・情熱) ⇒こどもの1ハウス
射手座(9ハウス=高度な学び・向上心)⇒こどもの5ハウス
人生を展開していく力
地のエレメント:
牡牛座(2ハウス=収入・自己価値)⇒こどもの10ハウス
乙女座(6ハウス=勤労・義務) ⇒こどもの2ハウス
山羊座(10ハウス=仕事・責任) ⇒こどもの6ハウス
人生の現実的な基盤を作る力
風のエレメント:
双子座(3ハウス=兄弟・コミュニケーション)⇒こどもの11ハウス
天秤座(7ハウス=パートナー・協力) ⇒こどもの3ハウス
水瓶座(11ハウス=仲間・平等性) ⇒こどもの7ハウス
人と協力しあう力
水のエレメント:
蟹座(4ハウス=家庭・安心感) ⇒こどもの12ハウス
蠍座(8ハウス=親密な関係・自他の融合)⇒こどもの4ハウス
魚座(12ハウス=隠された感情・潜在意識)⇒こどもの8ハウス
個を滅して心情的につながる力
自分(1ハウス)からみたこども(5ハウス)は120度(トライン)の関係なので、上に書いたように実際的な体験や感情を自然に共有し、末長くサポートするのでしょう。
その他の関係性
自分と子どもは120度(トライン)の関係ですが、その他の関係についても考えてみます。
兄弟姉妹:
自分(1ハウス)と兄弟姉妹(3ハウス)は60度(セクスタイル)の関係なので、意識的な努力によって発展します。
パートナー:
自分(1ハウス)とパートナー(7ハウス)は180度(オポジション)の関係なので、自ー他、主観―客観、という相反する要素が常に入ってきて変化を促されます。鏡の関係。
親:
自分(1ハウス)と両親(4・10ハウス)は90度(スクエア)の関係なので、互いに譲らず相手を否定し、緊張感の中で成長していきます。
友人:
自分(1ハウス)と仲間(11ハウス)は60度(セクスタイル)の関係なので、兄弟姉妹と同じく意識的な努力によって発展します。兄妹姉妹(3ハウス)との違いは11ハウスは南半球(社会側)であり、自分を基点にすると300度になるので、少し距離のある存在ということでしょうか??
師:
もう一つ120度(トライン)の関係があります。それは師(9ハウス・哲学・高度な学び)という存在です。師からの教えが自己像をサポートし、本来の姿へと導きます。
師(9ハウス)から見た「自分」は5ハウスなので、新しい自己像は常に師(学び)によって生み出されます。「師と自分」が「自分と子ども」と同じ120度の関係というのは興味深いですね。師と自分も水のハウスを共有し、師にとって自分は一生を通じて(南半球・社会的な面で)サポートされる子どもと言えるのかもしれません。
最後に、親子について・・・
自分からみた子どもとの関係は120度というソフトアスペクトであるのに対して、自分からみた親との関係は90度というハードアスペクトであることは、とても興味深いです。停滞した状況を打開していくのは90度のアスペクトなので、「成長」という観点からすると、親との関係を通して最も成長できると言えるのかもしれませんね。
・・・・・
後記
自分自身がこどもとの関係を通して、心情的な面で様々な体験をしてきたな(しているな~)という印象がとても強いので、派生ハウスにおいて、「こどもと水エレメントのハウスを共有する」ホロスコープの構造はとても納得できました。
自分から見た子どもとの関係(120度)と自分から見た親との関係(90度)のアスペクトの違いについては、
子どもの側からすると、介護のときなどに、昔の未解決の感情が噴き出してきて、「許す」とか「受け入れる」という葛藤が伴うことが多いのに対して、介護される親の方は葛藤というよりも「感謝」や「申し訳なさ」の気持ちが強いように思います。
子どもというものは最後まで養育して見守る存在であり、親というものは最後まで葛藤や成長を促してくれる存在なのかな、とあらためて思いました。
兄弟姉妹については、今、自分の周りでは、歳を重ねるごとに姉妹や兄弟の存在が重要になっている人が多いように思います。若い頃に喧嘩をしがちであっても、やはり気の置けない、とても気の合う最高の友人になっていくのでしょう。
60度の関係である兄弟姉妹や友人は、一緒にいてただひたすら楽しい関係で老後には必須かもしれません(笑)。
この派生ハウスという技法を使ってホロスコープを考察すると、きっと他にも興味深い面が見えてくると思います!
コメント