記憶と星座とホロスコープ

少し前に、NHKのヒューマニエンス・シリーズで『”記憶” 未来を切り拓く源泉』という番組を観ました。

その中で、記憶を「星座(コンステレーション)」に例えたお話が示唆に富んでいてとても興味深かったです。

・・・

例えば、家族や友人たちとバーベキューをしたとき、誰と行ったか、天気、食材、火の様子や熱さ、におい、会話、顔の表情、感情等々、たくさんの情報を受け取ります。

それら一つひとつの情報のパーツを無数のピンとすると、それらのピンを神経によって結びつけた一連の繋がりが「記憶」です。

記憶とは、細胞同士のやりとりを介して結ばれる情報のネットワークであり、それは「星座」のようなものなのだそうです。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

同じバーベキューに参加したとしても、どの情報ピンを結ぶかは人によって違うため、それぞれ異なる記憶になります。

確かに、友人と共通のできごとについて話していても、内容が食い違うことはよくありますね。

さらに、新しい情報が入ると古い記憶は改変されアップデートされるそうで、このように記憶を柔軟に変えられる能力が、生き残るための戦略なのだそう。

番組では、「記憶違いこそ記憶の本質」と言っていました。

記憶を星座に例えたお話は、とても印象的でした。

・・・

星座(コンステレーション)と言えば、臨床心理学者の河合隼雄先生を思い出します。

河合先生は、ものごとを自分と切り離して蚊帳の外からみるのではなく、自分も含めた全体の関わり合いの中でみることが大事と言っています。

例えば、こどもが学校にいかない状況があったとして、それをこどもの問題として原因と解決方法を探るのではなく、

自分も含めたすべての関係性の中で俯瞰し、開かれた心と態度でコンステレーション(全体の関わり合い)を読む。

こども、自分、周りの環境、全てを星座の中の一つひとつの星とみるのですね。無関係なものは何もない。

そして、この状況は私にとってどんな意味があるのか?と自分に問い、

余計な手は出さず、こどもの心の中に何かがあらわれるまで待つ、と言っています。

もし自分だったら、つい、解決方法を必死に探しそうな気がします(^^;)

河合先生のこのお話は、こうしなさいと押し付けることもなく、とても優しくわかりやすいと思いました。

たとえ遠く離れた国の戦争であっても、全体の関わり合いの中でつながっているのですね。

・・・

似たようなことが、『全ては関係性でできている』(カルロ・ロヴェッリ著)という本にも書かれています。

内容を少し引用すると、

「対象物は、ほかの対象物との関係においてのみその属性を有し、橋と橋が出会う節(ノード)になっている。」

「この世界は様々な視点のゲームであり、互いが互いの反射としてしか存在しない鏡の戯れ。この幻のような量子の世界が私たちの世界なのである。」

そして、ナーガールジュナの以下の言葉が紹介されています。

「『わたし』は互いに連絡し合う膨大な現象が構成する相対でしかなく、それらは互いに依存し合っている。究極の実態は存在しない。」

・・・

これらの話を重ね合わせてみると、

「わたし」や「私たちの世界」は絶対不変のものではなく、関係性によって成り立っていて、その点では記憶や星座によく似ているのかもしれません。

その関係性に、見る人の視点から意味を与えるのでしょう。

河合隼雄先生は、人間の心はコンステレーションを表現するときに物語ろうとする傾向があると言っています。

確かに、空の星座には古来よりそれぞれ神話がありますね。

Mira Cosic, AstrologerによるPixabayからの画像

ここで、占星術のホロスコープが思い浮かびました。

ホロスコープは、人が生まれた瞬間の星の配置を示していますが、ホロスコープの持ち主は、一生かけてその瞬間の星々の関係性を物語ろうとしているのかもしれません。

もしかしたら、、ホロスコープとは「記憶」なのでしょうか?

さらに言うと、、わたしたち自体が「記憶」なのでしょうか??

『ヒューマニエンス』の番組内でこんなお話がありました。

人は未来のことを想像した時、海馬周辺の空間イメージや思い出を司る部分が活性化し、それは過去を思い出しているときとほぼ同じ状態とのこと。

つまり、未来を考えるとき、過去を思い出して道標にしているのだそう。

脳にとっては過去も未来もなく、「未来はいつも懐かしい」のです。

空に輝く満点の星々は、それぞれが記憶であり、わたしたちの人生は、その内のいくつかを結び付けた無限のパターンを物語ることなのかもしれません・・・

(以上、妄想でした。。お読みくださりありがとうございます!)

参考:河合隼雄「京大最終講義-コンステレーションについて」

・・・

後記:「星座」とは何か、あらためて調べてみました。(多摩六都科学館HPより)

星座とは、正式には空の領域であり、天球上の位置を示すための〝空の住所〟なのだそうです。

言ってみれば、国境線にに囲まれた国土のような。

また、星座の線も、プラネタリウムや星図で見るものは例に過ぎず、正式な決まりはないので、好きに結んでもかまわないとのこと。

知らなかったです~。

コメント

タイトルとURLをコピーしました