蟹座の海王星② 街道沿いの小さな家 モード・ルイス

先日、『しあわせの絵の具~愛を描く人 モード・ルイス』という映画を観ました。サリー・ホーキンス演じる主人公のモデルになったのが、カナダの美しい四季や動物を色鮮やかに描き続けた画家モード・ルイス(Maud Lewis)です。

モードの人生がとても印象深く、チャートを見てみるとマイブームの蟹座の海王星(しかも牡羊ポイント)だったので、嬉しくなって少し調べてみました。

モード・ルイスについて

モードは、鍛冶職人の父と、絵と音楽が好きな母の間に生まれました。4歳の頃に若年性関節リウマチを発症、8歳の頃には徐々に成長が止まり、その後生涯に亘って手足が不自由で脚の痛みもあったようです。

周囲からの偏見やいじめもあったため14歳のときに学校を去り、以後母親から勉強を教わります。家族と家で過ごすのが最も楽しい時間でした

30代前半両親が相次いで他界すると、親族から厄介者扱いをされたため、自立のために、魚の行商を営む村のはみ出し者エベレットの家で住込み家政婦として働くことを決意します。

孤児院育ちで生きるのに精一杯だった孤独なエベレットとモードの共同生活はトラブル続きでしたが、やがてお互いを認め合い34歳の時に結婚します。

幼い頃から絵を描くことが大好きだったモードは、ハイウェイ沿いにある、約4メートル四方の電気もガスも水道もない小さな家の壁や窓、暮らしの小物など、絵が描けるあらゆるものに筆を走らせます。

エベレットは魚の行商をしながらモードのポストカードを売り歩き、家の前には「Paintings for Sale」という看板が掲げられて、次第に絵を買いに人々が訪れるようになります。

“Three Black Cats” Thanks to Oeno Gallery. They have Maud’s works for sale.

モードの絵は評判を呼び、雑誌やテレビで紹介されて、ニクソン大統領から依頼がくるほどになります。でも、モードは変わることなく、67歳で亡くなるまでその小さな家で絵を描きながら、エベレットと共に暮らしたそうです。(以上ウィキペディアより)

モードのチャートです。出生データは映画『しあわせの絵の具』のプログラムより。出生時間は不明なので、ご本人のイメージに合うテスト・チャートを作成してみました。(詳細な検証はしていません。月は蟹座の可能性も大。。)

モードを突き動かしたものは?

双子座の冥王星 スクエア 魚座の太陽

「この手に筆、目の前に窓さえあれば、私は満足です。」冥王星と太陽のスクエアは、“パラリンピックのアスリートたち~限界を超えて”にも登場しました。

不自由な手に絵筆を持ち(双子座)、心にある繊細な印象を表現すること(魚座)に挑み続ける姿は、パラリンピアンに通じるものがあります。

制限ゆえの無限。底なしのパワーが“筆で描く”ことに向けられています。太陽のサビアンは「ひらめきの流れ」。インスピレーションが泉のごとく湧いてきたのでしょう。

牡羊ポイントにある蟹座の海王星

上記魚座の太陽に共鳴しています。海王星が蟹座にあるマザー・テレサは、“死を待つ人の家”などを創りました(“人々のホームのために~マザーテレサ”)。モードの場合は、中の小物も含めた“家全部”が芸術作品(海王星)です。天王星とオポジションで創造性や個性が際立ちます。

マザーとモード、どちらも「愛」や「理想」、そして私たちが最後に還る場所である心の基盤を表現しているように思います。

さらに、モードの海王星は牡羊ポイントにあって“家”が有名になる可能性です。

ちなみに、1901年生まれのウォルト・ディズニーも、双子座17度の冥王星と蟹座0度の海王星で、冥王星は射手座の太陽とスクエアです。
こども心を最高にワクワクさせてくれる(双子座冥王星)、愛とファンタジーにあふれた心のふるさと(蟹座の海王星)、という感じでしょうか。確かに「夢の国」は世界中の人々が知っていますね(牡羊ポイント)。

また、1820年生まれのナイチンゲールは、山羊座0度の海王星、射手座28度の天王星、魚座28度の冥王星、魚座29度のノード軸で、全て牡羊ポイントにあります。
看護の現場に改革をもたらして病床環境を飛躍的に改善し、また看護師の身分を高めて確立した実業家とも言えますね。おそらく世界中の人々が知っている看護師さんです。

先人が残した作品や言葉にはその人の精神のようなものが宿り、その“目に見えない何か”が、時代を超えて私たちに大きな影響を与えてくれることはとても不思議だなと思うのです。

モードの原風景

理想主義(自己防衛の傾向)

さらに共鳴しています。

太陽=水星/金星・・・ものごとの美しさを知覚する

水星=金星/海王星・・・同情心、芸術的創造性、理想化

木星=太陽/水星・・・楽観性、地平線を拡げる

モードの絵には、田舎の自然や動物たちがカラフルな明るい色彩で描かれていて幸福感に溢れています。

家の中で過ごすことが多かったモードにとって、それらは幼い頃に見た思い出の風景であり、窓を通して心の中に作り上げてきた想像の世界でもあったのでしょう。何とも楽しげです。

テスト・チャートでは魚座の太陽が12ハウスにあります。ノエル・ティル先生は12ハウスを「窓のない部屋」と喩えられていますが、魚座-海王星-12ハウスは、「窓」を通して意識が自由に拡がるのかもしれません。

カメラのファインダーや望遠鏡など、自分の「窓」を見つけられると良いですね。

“Covered Bridge” Oeno Gallery

グランド・トライン(自己防衛の傾向と才能のありか)

さらに、水星(水瓶座)・火星(天秤座)・冥王星(双子座)からなる風サインのグランド・トラインがあります。

情報に関する自己閉鎖回路で、外からの情報やコミュニケーションをシャットアウトすることで、自分を何かから守る傾向です。「私は自分で何でも知っているから人と交流する必要はない。」

ですが、何度も何度も繰り返すことで熟練し発展していく、豊かな才能のありかも示しているのでしょう。

母親からの教え

天王星 オポジション 月

月は出生時間によって、双子座か蟹座のどちらかになりますが、天王星とのオポジションはほぼ有効です。

この組み合わせは「人に迎合せず」「個としてありたい」欲求や、「心の距離感のある母」を示すことが多いようですが、モードの場合、「自立することを教えてくれた母」なのかもしれません。

月は、出生時間によって海王星か冥王星、または両方とコンジャンクションです。

モードに絵を描くことを教え励ましたのは、自身も描くことが好きだった母親だったそうです。モードにとって絵を描くということは、母と過ごした時間を感じることでもあったのでしょう。

出会いが人生を変える

金星(牡羊座)と火星(天秤座)のオポジション&ミューチュアル・レセプション

モードと夫のエベレットは強い絆で結ばれていたそうです。1-7ハウスのナチュラル・ルーラーによるこのアスペクトは、お互いに補いあう、なくてはならない存在であったことを示しているようです。

エベレット(天秤座火星)は行商の傍ら値段の交渉をして絵を売り、モード(牡羊座金星)はそれに応えて絵を描き続けます。

2人の境遇を考えると、“絵が売れる”ということは、とても大きな喜びだったことでしょう。お互いに喜び合い「自己価値」を高め合います。晩年はエベレットも絵を描いていたそうです。)

モードはエベレットに出会って、個性を開花させて生きる幸せを得て、エベレットもまた、モードと暮らし、サポートすることで生活に温かな色彩が加わりました。

オーブは広めですが、金星・火星にノード軸がのり二人の縁を感じさせます

ちなみに、モードが描いた絵は、現在はオークションで500万円以上で取引されているそうです。

モードの死

リウマチの悪化と、長年ストーブの煙を吸い続けたことによる肺気腫により、モードは67歳で亡くなります。冥王星が双子座にあり、双子座・水星に緊張が生じています。「手」と「肺」が身体の弱点の一つであった可能性です。

人生が色彩豊かな絵画

モードは闘病しながらも最期まで絵を描き続けましたが、その人生もまた、“チャート”という素材(絵の具)を使って描かれた色鮮やかな絵画のようです。

生まれ持った才能を活かしきってあげること、そして、その喜びを分かち合う人がいたということ、それ以上望むものはなかったのでしょう。

モードは、生涯、生まれた場所から車で一時間以内のところから出ることはなかったそうです。

絵筆と窓があれば、モードにとっての世界は無限に広がったのですね。そして、“家”はどこよりも幸せな場所だったのでしょう。

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