半球の偏りと逆行天体~登山家・栗城史多氏の挑戦~

冒険家・登山家である栗城史多(くりきのぶかず)さんという人物のことが、少し前からとても気になっていました。

栗城氏は、2018年までに世界7大陸最高峰のうち6大陸を制覇しました。そして、単独無酸素でのエベレスト登山に何度も挑み『冒険の共有』としてその様子をSNSなどで生配信し続けました。目指したのは否定という壁への挑戦人々があきらめていた何かに挑戦する世界の実現です。

非常に多くの人たちの共感や応援を得て、一大ムーブメントを巻き起こしたのですが、いつからか「単独無酸素」という条件にクレームが付き、応援のコメントが誹謗中傷のコメントに変わり始めました。「無謀」「嘘つき」などの批判は1か月に3万件にも及んだそうです。

ネットに励まされ、そして翻弄されました。(周りからはそのように見えました。)

2012年のチャレンジのときには凍傷で指を9本失いました。無謀と言われる中、それでも「単独無酸素登山」に7度チャレンジし続けます。チャレンジに失敗するたびにSNSでは心無い反応が続き、次第に人々の関心は薄れていきました。

これが最後と決めていた8度目のチャレンジは、発熱や咳から完全には回復していない身体で挑みました。しかも南西壁という最難関ルートを選びます。

そして、2018年5月21日未明、体調不良で登頂を断念した下山中に滑落、帰らぬ人となりました(享年35歳)。

『栗城史多は、誰?』

先日、栗城氏の追悼ギャラリーが催されて2日間で延べ2,000人を超える来場者があったそうです。栗城氏は何を求め続けたのか?ギャラリーの説明文にはこう書かれていたそうです。

「栗城史多は、誰か。その答えは、まだない。その答えは、もうない。ー」

亡くなったが故になお一層その答えに近づきたくなります。

人を完全に理解することは不可能ですが、今回はチャートの半球の偏りに注目して考えてみました。

栗城氏のチャートです。(ウィキペディアより、出生時間は不明)

半球の偏り

一見して特徴的なのは、太陽と反対側に位置する天体のうち、木星、土星、天王星、海王星、冥王星が逆行していることです。(℞に赤丸印が逆行天体です。実際には逆に進むことはありませんが、地球からはそのように見えるということです。)

ティル式心理占星術で半球の偏りを判断するときに、逆行天体は180度反対側にカウントします。なので、栗城氏のチャートは太陽がある半球への偏りということになります。(出生時間が不明なのでどの半球かはわかりません。)

ティル先生は、このような状態を「まるで天体たちが太陽に向かってお辞儀をしているようだ」と仰っています。これはどのようなことを意味するのでしょうか。

インタビューより

亡くなる2か月前のインタビューより抜粋(要約)しながら、栗城氏のチャートを見てみたいと思います。

自分は何かというと、やはり「登山家」である。山に登り人に伝える。おそらく、エベレストへの挑戦を越えられるものはないでしょう。これが人生のピーク。新たな目的が見つかればまたやるかもしれない。

栗城氏はエベレスト登山に人生を賭けていたのですね。

海王星 オポジション 太陽(双子座)

天王星(射手座1度) クインデチレ 太陽

天王星 オポジション 水星(双子座)

「冒険」という夢を追い求め、それを映像やメッセージで人々にわかりやすく伝えたいという強い衝動。他にはない独創的な方法による情報発信にこだわり、わが道を切り開く。

山も好きだけど、気になるのは「人」「人間とは何ぞや」ということ。人間は弱いので、自分の中でわからないことについて、答えを知らないと動けないし、共有できないし、理解しようとしない。否定の壁がある。そういう空気を越えられる世界ができたらよいと思う映像を通して見ている人の心の壁を打ち破りたい

批判も冒険のうちなので、実はあまり気にならない。

天秤座の火星・土星・冥王星

蠍座0度の木星

天秤座に火星・土星・冥王星があり、人間関係(天秤座)に関することが、人生で取り組むべきテーマであり乗り越えるべき困難となりそう。人からのリアクションを必要とする。

人との深い関わりがチャンスを運んでくる、あるいは何かを深く信じる気持ち。

冥王星(天秤座)クインデチレ 金星(牡牛座)

愛情を強烈に求める傾向。表現へのこだわり。

土星 スクエア 月(山羊座)・ノード

強い義務感、目標を達成することを自分に課す。そのようなご両親の教育方針だったのかもしれません。栗城氏の活動の動機に深く関わっているのではと思います。

おそらく栗城氏は、これまでの人生で、自分の中の否定の壁を越えることで新しい世界が開ける経験をされてきたのだろうと思います。それを人々に伝え共有したかった、共に越えていこう、と

「どうせ自分はだめなんだ」「どうせできないからやっても仕方がない」とか「あいつは何をやっているのかわからない、わかろうとしない。」といった世界を変えたかった。

だから、自分の中の壁=「エベレスト単独・無酸素登山」にこだわり続けたのかもしれません。

栗城氏について~記事より~

栗城氏はどういう人物であったのかがよくわかる記事を見つけました。

「CAMPANELLA(カンパネラ)」という情報サイトの「挑戦の原点を探る 栗城史多氏(登山家)の場合(全3回)」です。ご興味のある方は読んでいただくとより理解できると思います。

そこから、栗城氏らしいエピソードを一部抜粋してみました。

・高校時代に母を肺がんで亡くしたことから、毎日を精一杯生きることを決意する。

・肝心なときには父が背中を押してくれた。父は一人で温泉を掘り続け、次第に周りの人を巻き込み、ついに本当に温泉を掘り当てて皆に喜ばれる。

大好きだった彼女がなぜ山に登るのかを知りたくて山に興味をもつ。

・大学の山岳部の先輩との出会いで、自分の中に作っていた限界の壁が一枚ずつ壊れていく。先輩の口癖は「登頂癖をつけろ!

・不可能は自分の心が勝手に作ったもの。山の頂上には「夢」と「越えるべき自分」がある。

「夢」は、それが人のためになることでなければならない。

・感動とは苦しみの先にある喜びである

栗城氏について~周りのスタッフのお話~

親しかったスタッフの言葉を引用します。

「みんなにカッコいい姿を見せたかったのでしょう。みんなの夢を背負って。でも、弱さも魅力だった。そのままでよかったんだよ。」

「無理だということに対してチャレンジする自分がアイデンティティになってしまい、何を言っても止められなかった。」

周りの人は、弱さも含めてそのままの栗城氏が好きだったのだなと思います。

等身大の自分を見るということ

ここで、最近話題になった著名人で、太陽と反対側の天体が4つ以上逆行している方のチャートをあげてみます。

元稀勢の里関 と ピエール瀧氏

元横綱 稀勢の里関のチャートです。(出生時間不明)

人一倍努力を重ねて横綱に昇進して2年、負傷のあとなかなか一勝をあげることができませんでした。場内の大きな期待と声援の中で”負け”が続き、何か気持ちがそこから抜けられないパターンに陥ってしまったように見受けられました。

親方の「気持ちを強く持つ」というようなコメントが記憶にあります。

引退後のインタビューでは、「親方から、横綱になったら見える景色が違うと言われたけれど、自分はその景色を見ることができなかった。」と仰っていました。その景色というのは、私たちにはわからない領域ですが、本当に自分に厳しく真摯に努力してこられたこと、そしてこれからもその道を歩み続けるであろうことを感じました。

俳優、アーティストのピエール瀧氏のチャートです。(出生時間不明)

2019年3月12日、コカイン摂取で起訴されました。

グランドセクスタイルの一角欠けです。

非常に感性豊かな才能のある方なのだなと思います。仕事が大きく発展していく中で不安も増大していったのでしょうか。逮捕当時、欠けた一角に入ったトランジット冥王星(山羊座)がトリガーとなって強制終了がかかりました。

たまたま同じ時期に話題になったお二人ですが、「発展の可能性と同時に、期待に応えたいという大きなプレッシャーとの戦い」という共通点を感じました。

栗城氏がエベレストに散ったとき

栗城氏は、2018年5月21日未明、エベレストでの下山途中に滑落し命を落としました。(チャートは午前2時と仮定しました。)

おそらく最後の挑戦として臨んだエベレスト。

万全とは言えない状況で、なぜ最難関のルートを選んだのか。

登頂を断念したときにはどんな気持ちだったのだろうか。

(特に下山の際には、生きて帰ってまた山に登るのだという気持ちで臨まないと、気の緩みがでて危険なのだそうです。)

Robert Hand氏の『Planets in Transit』を参考に、滑落推定時刻のトランジット・チャートについて考えてみました。

トランジット海王星 スクエア 太陽

「人生の方向性がわからなくなる混乱と不安定のとき。自分がだれか本当には知らないことを指摘されるのは楽しくはないが、そこから自分がだれなのかを知ることに繋がる。」

亡くなったあとも、TV番組で取り上げられたり、追悼ギャラリーやコンサートが開かれたりして人々に大きな影響を与えています。多くの人が栗城氏とは誰か、「冒険の共有」とは何だったのか考えています。

トランジット天王星 オポジション 木星

「突然失うか、突然手にするか、賭けのとき。もし、厳しい緊張状態に耐えてきたにもかかわらず何も得るものがないならば、その緊張から解き放たれて大きな開放感を得るだろう。」

トランジット火星 スクエア 木星

「しかし、自分に負担をかけ過ぎて能力を超えてしまってはいけない。自分の影響や経験の領域を広げても、心理的・体力的な力を越えてはいけない。自分が強健だと感じることで限界を越えてしまうだろう。しかし、時がきたときにそのツケを払わねばならない。リスクを好む性質がアクシデントにつながるので注意。」

トランジット水星 コンジャンクション 金星

「このトランジットでは自分の知覚と経験の中で繰り返されてきたパターンを知ることで、すべてを繋ぎ合わせ、人生を全体として理解することができる。」

「愛する人のことを考える。」

トランジット月・ノード スクエア 金星

「過去を懐かしく回想する。愛着。」

トランジット太陽 オポジション 天王星

「『日常』とは全く異なるとき。

トランジットから想像できることは・・・

滑落したとき、もしかしたら、大きな重荷から解放されたような気持ちだったのかもしれません。自分が求めてきたものの正体がわかったのかもしれません。そして、懐かしい愛する人々を思いだし自分がどれだけ幸せであったか、知ったのかもしれません。

山ではなく自分を見て登ること

おそらく、特に太陽が西半球にあり逆行天体群が東半球にある場合、”相手”のために全身全霊でエネルギーを注ごうとする、相手優先の強力な西半球への偏りを示しているのでしょう。ティル先生の「太陽に向かってお辞儀をしている」という表現は、天体が太陽という大きな存在に自分を捧げてしまっている、というイメージなのかなと思います。

人の期待や応援に応えたいと強く思ったとき、その期待が大きければ大きいほど向き合うべき課題も巨大に感じられて自分を見失うのかもしれません。

栗城氏の山の大先輩からの言葉です。

山だけを見るのではなくて、自分を見ろ

等身大の自分を見る。

努力してきた自分を信じる。

ふと立ち止まって周りを見れば

人は温かく、自分は一人ではないんだと知る。

巨大化した怪物のありのままの姿が見える。

栗城氏が追い求めたものの答えを知ることはもうできませんが、それ故にその印象は私たちの中にずっと残るのでしょう。

見果てぬ夢』を追い求めた「ラ・マンチャの男」(ドン・キホーテ)を思い出します。

And the world will be better for this

That one man, scorned and covered with scars

Still strove with his last ounce of courage

To reach the unreachable stars!

この世の中を少しでもよきものにするために

一人の男が、蔑まれ傷だらけになりながら

なおも最後の勇気を振り絞って進むのだ

あの届かぬ星を目指して

書ききれていない思いはありますが・・・謹んでご冥福をお祈りいたします。

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